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地域の方にとって憩いの場のような存在の、松寿司さん。お話を伺うと、やはりこういうお店に通いたいなと感じさせられる、お客様への誠実な思いがありました。 司さん▶▶▶ 松寿司は、45年ほど前に開業したお店になります。当時は、父が職人さんを雇って経営していました。私は寿司屋はやりたくないと思っていて、自動車部品の会社に勤めたんですね。でもやっぱり気持ちが変わって、角田の「さくら寿司」というお店で3年程、見習をすることになりました。24歳の時に大内に戻ってきてお店を継ぎ、来年で30周年になります。 美和子さん▶▶▶ 私は、夫が大内に戻った頃に嫁いできました。結婚した当初は会社員をしていたんですが、お義母さんが辞めるというのをきっかけに、22年前からお店に出るようになりました。夫婦でありながら、同僚でもあり、親友でもあるという感じですね。 司さん▶▶▶ 片方だけでは、できない仕事だから。別々に行動していても、あったことは細かく共有・伝達するようにしています。 ――ご夫婦二人三脚でやってこられたのですね。これまでお二人で作り上げて来られたお店の特色というと、どういったところになりますか 司さん▶▶▶ コミュニケーションというのも仕事のうちに入るんじゃないかと思うんですが、お話したくて来る方が多いんですよね。 美和子さん▶▶▶ 最初はカウンター席を少なくしたかったんだけど、みんな「カウンター空いてる?」と言うので、椅子を増やしたり、カウンターの近くにテーブル席も持って来たり。それで今のレイアウトになったんだよね。 司さん▶▶▶ カウンターが空いてないと、「じゃあ、いいわ」となる人もいるしね。でも話していると、面白いんですよ。お客さんが知り合いの知り合いだったり、通っているお店が共通していたりなんてこともあって、どんどん繋がるんですよね。最近は若い世代の子も来てくれるけど、そうするとお父さんとかお祖父さんの名前を聞いてしまうよね。 ――若い世代のお客様も増えていらっしゃるんですね 司さん▶▶▶ そうですね、最近は縁あって若い方とも繋がったり。逆に今まで晩酌に来てくれてたような方が、高齢になって出歩く機会がなくなったりというのがあるかな。 美和子さん▶▶▶ コロナがあって、外に出ていくという日常がなくなったという事もありますね。 司さん▶▶▶ 実は、2年前からインスタを始めたんですね。そこから、ちょこちょこインスタでお客さんが来てもらえるようになったんです。そうじゃなければただ減っていく一方なんですが、知ってもらえるというのがいいですね。 美和子さん▶▶▶ 松島からとか亘理からという方もいて。インスタでコメントが入ったと思ったら、その人が来てくれたりとかね。 司さん▶▶▶ 新規のお客さんだけでなく、常連さんへのPRにもなっていますね。「ツブが入ってるよ」とか「白焼きが入ってるよ」とか言えば、それが好きな人が来てくれたりもします。 30年愛用している包丁(写真下)。最初は上と同じ長さだったが、研いで使い込むうちにこの長さに ――お寿司屋さんならではの苦労や喜びというのは、どんなところですか? 司さん▶▶▶ 寿司屋の苦労というと、時間でしょうね。普通に8時-17時の仕事ではないので。朝の仕込みなんていうと、予約が固まれば2時に起きてやんなきゃいけない日もある。お刺身切ったりっていうのはその日じゃないとできないから、どうしても朝は早い。夜はお客さんがいなければ20時過ぎに閉めることもあるけど、お客さまがいればそれなりに開けているしね。法事の仕事を頂けば、休みの日でも対応することもあるし。でも数あるお寿司屋さんの中から選んで来て頂いて、「うまかった」といって帰られた時は、本当に嬉しい限りだなと思います。 ――今後のお店の展望などがあれば、お聞かせください。 司さん▶▶▶ うちは特別なことはしていないんですよ。ただし極力、既製品を買わず、手をかけてうちで仕込む。他に何かないんですかとも言われるけど、それ以上のことはないと思うんだよね。魚なんかも開いて売ってはいるけど、あくまでも仕込みで作るというスタイルで。 美和子さん▶▶▶ お客さんは食べれば、既製品とは違うってわかりますよ。漬物だって、自分でつけたものと既製品は違いますしね。 司さん▶▶▶ 何をやるにも、うちは砂糖と醤油と酒とみりんくらいしか使わないですから。卵焼きの出汁だろうが、かんぴょうだろうが。既製品の卵焼きなんかは、モヤっと甘いんです。味の特色がなくてボヤけてる感じ。 美和子さん▶▶▶ 卵だってかんぴょうだって買えば楽なんだろうけど、そんなことしたらうちの味じゃないよね。 司さん▶▶▶ うん、どこでも同じ味になる。特色がなくなるね。お寿司屋さんだけど、牛タンなんかも1本買って、血抜きして寝かせて作ってるんです。 美和子さん▶▶▶ 前に牛タンがすごく高くなったことがあって、金額は上げずに薄くしたんですね。そしたらお客様から「こんなのはどこでも食べれる。高くてもいいから分厚いのがいいんだ」って言われて。 司さん▶▶▶ そこそこ高くたって美味しい物を食べたいと思う人が来て頂いている、満足度なんだろうなと思って。それを裏切れないから。 松寿司 業種:飲食業 創業:1979年 休日の居場所:ネバーランド ※ネバーランドについては、松野さんのインスタグラムをぜひご覧ください! 文 / 山下久美 撮影 / 山本楓子
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